2026.07.21 社長ブログ
仕事は欲しいけど見積もりを辞退しました
こんにちは。那須林産工業の渡辺太一です。
確か昨年の10月頃だったと思います。
私が修業時代に勤めていた会社の方からの紹介で、ある設計事務所様の住宅案件についてご相談をいただきました。
最初から相見積もりになることは聞いていたのと、弊社は基本的に高気密・高断熱住宅以外は工事をしていないということも、その時点でお伝えしていました。
その際、設計事務所様からは、
「これから本設計や構造計算などが進みますので、本見積もりの依頼は来年の4月以降になると思います」
とも伺っていました。
そして先月末、正式に見積依頼のご連絡をいただきました。
ただ、皆様もご存じのとおり、今年に入ってから中東情勢やナフサ価格などの影響で建築資材をはじめさまざまな価格が上昇しています。
そのため設計事務所様からも、
「御社の仕様では、今回の予算に合わないのではないか」
「難しいようであれば、辞退していただいても構いません」
と、ご配慮いただきました。
正直、かなり悩みました。
もちろん仕事は欲しいです。
会社を経営している以上、仕事をいただき、売上をつくらなければなりません。
ただ、施主様は高気密・高断熱住宅に興味はあったものの、現在の建築価格の上昇もあり今回は価格を重視して進めていると設計事務所様から伺っていました。
悩んだ結果、私は今回の見積もりを辞退することにしました。
受注だけを目的にするのであれば、設計事務所様の仕様で見積もりを行い、金額を頑張って合わせられる部分もあったかもしれません。
ただ、それをすると、私が長年勉強し現場で経験を積み重ねながら決めてきた弊社の標準仕様から外れてしまう可能性がありました。
その建物を、自分が本当に良いと思えるのか。
完成した後に、自信を持ってお客様へお渡しできるのか。
そう考えた時に、私は難しいと感じました。
弊社の標準仕様は、ただ断熱性能を高く見せたいから決めているわけではありません。
那須の冬の寒さや夏の湿気、日々の冷暖房費、耐震性、換気、耐久性、将来のメンテナンス。
いろいろなことを考え、長年勉強し、実際に現場で経験してきた結果として今の仕様があります。
そのため、価格を合わせることだけを優先し、自分が必要だと思っている部分を削った住宅をつくることは私にはできませんでした。
もちろん、私も生活していくためにお金は必要です。
会社を続けていくためにも、仕事をしなければなりません。
それでも私は、この地元で生まれ育ちこの地域で住宅をつくる以上、自信を持って良い建物だと言える住宅を残したいと思っています。
そして、お客様に満足していただける住宅をつくりたいと思っています。
仕事を頼まれたからといって、何でも引き受ければよいわけではないと思っています。
引き受けてよい仕事もあれば断るべき仕事もある。
目先の売上だけを考えて、自分たちの考えに合わない仕事まで引き受けてしまうと、結果的に良い仕事ができなくなる可能性があります。
良い成果を出せない仕事に時間を使えば、本来自分たちが取り組むべき仕事に使える時間も失ってしまいます。
それは、お客様にとっても、会社にとっても良いことではありません。
今回の案件は、設計事務所様や施主様が悪いという話ではありません。
設計事務所様には、こちらの事情も考えていただきご配慮いただいたかと思います。
ただ、住宅に何を求めるのか、何を優先するのかという部分が、今回の弊社とは合わなかったのだと思います。
その違いを曖昧にしたまま見積もりへ進むよりも、早い段階で辞退した方がお互いのためになると判断しました。
また私は頼まれた仕事だけを受けるのではなく、自分たちが本当にやりたい仕事を自分たちでつくっていくことも大切だと考えています。
自分たちは、どのような住宅をつくりたいのか。
どのようなお客様に喜んでいただきたいのか。
何を大切にして、何を曲げないのか。
そこをはっきりさせ、自分たちから発信していかなければ、本当にやりたい仕事にはつながらないと思っています。
本当に難しい判断でした。
仕事を断ることには不安もあります。
それでも、自分の信念を曲げてまで引き受ける仕事ではないと判断しました。
そして、「よし、また頑張ろう」と思った矢先のことです。
昨年お問い合わせをいただき、その後1年ほどご無沙汰していたお客様から、
「土地を購入したので、改めて家づくりを検討したい」
という、とてもうれしいご連絡をいただきました。
もちろん、今回見積もりを辞退したことと、このご連絡に直接的な関係があるわけではありません。
結果論ではあります。
ただ、自分たちが今までやってきたことや発信してきたことを、見てくださっている方がいるのだと感じました。
信念を曲げなければ必ず仕事が来るという単純な話ではありません。
それでも自分たちが良いと思う住宅を真面目につくり、その考えを伝え続けていけば、いつか共感してくださるお客様と出会えるのだと思います。
これからも、自分の信念を曲げることなく、自信を持って良いと言える住宅をお客様に提供できるよう精進していきたいと思います。